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東京慈恵医科大学同窓会

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2022年12月25日 第42回慈恵医大夏季セミナー
東京慈恵会医科大学附属病院医療連携フォーラム


上部消化管におけるロボット支援手術の導入、現状、展望
上部消化管外科診療医員 藤宗春

【はじめに】
 ロボット支援下手術は元々戦場や無医村における遠隔手術を目的として米国陸軍で開発が始められたが、その後に民間での治療システムとして転用開発され、本邦では2009年にダヴィンチサージカルシステムが薬事法承認された。2012年に前立腺全摘で保険収載され、当初は泌尿器科領域を中心に使用されてきたが、2018年に食道、胃、直腸などの消化器領域でも保険適応され、全国的に導入が広がる中、当院でも泌尿器科、呼吸器外科に引き続き、2020年10月に上部消化管外科で導入する運びとなった。
 ロボット支援下手術の長所として3D拡大視野、手振れ防止や多関節機能などが挙げられており、胃癌領域では通常の腹腔鏡手術と比較して術後膵液瘻の発生割合が減少したとの報告がされている。これは膵臓周囲のリンパ節郭清時において、3D拡大視野効果や多関節機能により膵実質への物理的接触が極力抑えられるようになったことが要因であると考えられており、より低侵襲な手術が可能になったと言われている。また、食道癌領域でも同様に反回神経麻痺や肺炎などの呼吸器合併症の割合が減少したとの報告がある。
 一方、短所としてはロボットアームのドッキング操作や鉗子の入れ替え操作に伴う手術時間の延長、触覚の欠如による不用意な臓器損傷、医療コストの増加などが挙げられている。ただし、コスト面に関して胃癌領域ではロボット支援手術時の診療報酬点数が今年から加算されたことでデメリットは少なくなったと思われる。

【当科におけるロボット支援下手術の導入と現状】
 当科では胃癌領域に対して私が、食道癌領域に対して谷島雄一郎医師が術者を担当し導入を行ってきた。前述したように2020年10月から導入を開始し、徐々に症例を蓄積し現在まで胃癌15例、食道癌13例の経験を積んでいる。当初はプロクターとして胃癌領域に関しては国立がん研究センター東病院の木下敬弘先生、食道癌領域に関しては新東京病院の岡部寛先生を招聘したが、現在は独立して手術を行っている。
 導入初期は手術時間が明らかに延長したが最近は時間短縮が図れており、術後合併症発生率に関しては通常の鏡視下手術と遜色なく、安定した成績で症例を積み重ねている。

【今後の展望と課題】
 これまでは一台のダヴィンチを複数科で運用する状況であり、手術枠の問題で症例集積が難しい面もあったが、11月から2台目を導入したため今後はより多くの症例を蓄積できるものと考えている。通常の鏡視下手術に対する若手教育の観点から現時点で全例ロボット支援下手術に移行するのは時期尚早と考えられるが、今後は徐々に割合を増加させ、いずれは若手の早い段階からロボット手術に精通した人材を育成することを検討したい。より多くの患者さんに低侵襲で高度な医療技術を提供できるよう今後も研鑽を積む所存である。施設基準として一定数以上の手術件数が必要であり、今後も皆様のご支援とご協力を賜りますよう、お願い申し上げたい。また、この場を借りてロボット支援下手術の導入に携わって下さった全ての関係者に感謝申し上げる。

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