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東京慈恵医科大学同窓会

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2023年03月25日 第42回慈恵医大夏季セミナー
東京慈恵会医科大学附属病院医療連携フォーラム


婦人科におけるロボット支援下手術
産婦人科診療医員 平田幸広

【はじめに】
 手術支援ロボットは1999年に発売され、2000年7月に米国食品医療局(Food and Drug Administr-ation:FDA)により認可された。婦人科では2005年に良性疾患における子宮摘出術と子宮筋腫核出術に対するロボット支援下手術がFDAの承認を得てから、欧米では急速に広まっている。本邦においては、2012年に前立腺癌に対するロボット支援下手術が保険収載されてから多くの領域で導入されている。腹腔鏡の最大の特性は拡大視野で深部到達能に優れ、的確な剥離層での手術が可能であり、従来の開腹術では認識できなかったような細い血管や神経などの構造を確認できたことである。そのため骨盤深部の操作や大血管周囲の繊細かつ正確な操作が必要な婦人科手術に適している。ロボット支援下手術では高解像度3D画面上で、解剖が理解しやすい。さらにロボット鉗子は多関節を有し、術者の指の動きに同期した繊細な腹腔内操作が可能である。また手振れ防止機能により精微で安全な操作が可能である。

【婦人科におけるロボット支援下手術の現状】
 本邦では2009年に初めて婦人科疾患に対するロボット支援下子宮全摘手術が行われた。2018年に良性疾患、子宮体癌に対して、また2020年には骨盤臓器脱に対するロボット支援下仙骨腟固定術が保険収載されている。東京慈恵会医科大学附属病院では、2021年6月よりロボット支援下手術を開始している。ロボット支援下手術を行うためには定められたcertificateが必要となり、術者3名、助手3名の体制で手術を行なっている。ロボット支援下子宮体がん手術は開腹手術と比較し、術後イレウスや創部離開が少ないなどの利点がある。また子宮体癌は肥満症例が多く、腹腔鏡手術では鉗子操作が制限され術野展開に難渋することがある。ロボット支援下手術ではポートで腹壁を挙上するため、従来の気腹に加え、吊り上げ式を併用するような形になり、さらに高度の骨盤高位のためワーキングスぺースが得やすいなど多くのメリットが挙げられる。現在、良性疾患が11例、子宮体癌10例、骨盤臓器脱3例と順調に症例を積み重ねており、従来の腹腔鏡下手術と同等の手術成績が得られている。またロボット支援下手術ワーキンググループを発足し、慈恵医大及び関連施設でのロボット支援下手術の安全導入と普及のため情報共有、技術共有を行っている。

【婦人科におけるロボット支援下手術の展望】
 今後の婦人科領域のロボット支援下手術ではロボット支援下広汎子宮全摘術およびロボット支援下傍大動脈リンパ節郭清の保険収載が期待される。開腹手術や腹腔鏡手術で行われてきたこれらの術式は骨盤深部や大血管周囲の操作が必要で出血量も多くなり、婦人科領域では極めて難易度の高い手術である。ロボット支援下手術の高解像度3Dによる拡大視能や多関節、手振れ防止機能により更に安全な手術が可能になると考えられる。当院では2020年11月より2台目のda Vi-nciが導入され、更なる手術件数の増加が見込まれる。そのためより多くの患者様に安全で低侵襲な手術が提供できるよう努力したい。また今後も同窓の先生方含め多くの方々のご協力を賜りたいので宜しくお願い申し上げます。

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