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東京慈恵医科大学同窓会

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2023年04月25日 入学式祝辞

学校法人慈恵大学
理事長 栗原 敏

 医学部医学科105名、看護学科60名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。教職員一同、皆さんを心から歓迎いたします。
 また、保護者の皆様には、ご子弟のご入学おめでとうございます。これまで見守ってこられたご子弟が入学されお慶びも一入(ひとしお)と思います。これからの勉学は、自分が学ぶという態度が求められ、より、一層厳しいものになると思います。入学後も物心ともにご支援をお願いいたします。
 医学科の入学生は、医師、医学者などを、看護学科入学生は、看護師、保健師などを思い描いて入学されたことと思います。皆さんのこれからの進路は実に多様です。皆さん自身が何を求めているのかが問われます。入学前に医師、あるいは看護師になるための道について調べたことと思いますが、皆さんの前には、無限と言っていいほどの道があると思います。これからは、自分で考えて歩みを進めることが求められます。医学科も看護学科も、これから多くの知識が伝授されると思いますが、これからは、知識を覚えるよりも、自らの頭で考えることが重要になります。医学・医療の進歩は目覚ましいものがあります。知識量は莫大に増えていると言われていますが、何が本当に必要なのかを見極めることが大切です。教科書に書かれていることが、どのようにして導かれたのかを考えることによって、知識の背景にある考え方や、原理・原則を知ることができます。皆さんは膨大な知識に振り回されることなく、知識がどのようにして導かれたかをよく考える習慣を身につけて欲しいと願います。
 学ぶということは、自ら疑問をもって自分自身で考えることです。格物致知という言葉がありますが、物の道理を窮め知的判断力を高めるという意味です。間違いのないものを求める姿勢はこれからの勉学に極めて重要だと思います。本学の生理学教授であった生沼曹六先生は、“真を愛する心”が大切だと仰いましたが、その心こそ、教育、研究、診療の基本ではないかと思います。新入生の皆さんは先入観に捉われないで考える力を涵養して下さい。
 新型コロナウイルス感染症の拡大によって、人と人とのコミュニケーションが著しく阻害されました。対面による授業や会議は減り、オンラインによる授業や会議が増えました。致し方ないことですが、真の意思疎通には人と人が直接会って話すことが必要だと実感しました。オンライン方式は、知識などを端的に伝えるのには適していますが、細かな意味合いを伝えるのには不向きだと思います。
 人は直接、会うことによって様々な情報を得ています。私は昭和40年(1965年)に本学に入学しました。入学式では樋口一成・第六代学長から、“諸君は医学者になるという気持ちで、友愛の精神をもって研鑽して欲しい”と言われました。先生の迫力ある言葉は、将来の道を熟慮していなかった私にとって、衝撃的でした。当時は国領校での医学進学課程で一般教養を2年間学び、医学進学課程を終えてから、西新橋の専門課程に進みました。専門課程の生理学の講義の初日に酒井敏夫教授が、教室の先生方を伴って、旧大学本館西講堂に入ってこられました。その時、酒井敏夫教授と教室の先生方に親しみを感じたのです。その後、演習などで酒井教授から親しく声をかけられ、また、教室の先生方と学生とが一緒に昼食を取る昼食会に出席するなどしているうちに、酒井教授をはじめ生理学教室の先生方から、指導を受けることになりました。それが、端緒となり生理学教室に出入りするようになり、自分も自由な研究者の道を歩みたいと考えるようになったのです。私が、酒井教授に出会ったことによって、私の将来が決まったと言っていいと思います。このように人と人とが直接出会うことによって、言葉を超えた情報が伝わっているのです。
 新入生の皆さんの多くは、入学前の3年間、新型コロナウイルス感染症による制約が多い中、勉学に励み入学されたことと思います。これからは、先生や友人と直接接して、良き師や友人を求めて研鑽して欲しいと願っています。これからの勉学は自らが学ぶという姿勢が大切です。また、断片的な知識の習得ではなく、物事の本質をよく考えることがより重要になります。そのことを忘れずに、医学科は6年間、看護学科は4年間、充実した学生生活を送り、医師や看護師になる礎を作って欲しいと願い、祝辞といたします。

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