東京慈恵医科大学同窓会
最新情報2024年03月25日 奈良萌子君(医4年)
第106回日本細菌学会関東支部総会優秀発表賞を受賞
第106回日本細菌学会関東支部総会が令和5年10月29日に日本大学松戸歯学部キャンパスで開催され、奈良萌子君(医4年)が優秀発表賞を受賞した。奈良君は医学科2年より選択科目である「ユニット医学研究」を履修し、平日の授業終了後や休暇などを利用して細菌学講座にて杉本真也准教授の指導の下、大腸菌の細胞外アミロイドCurliの産生におけるHsp70シャペロンについて研究してきた。
本学会では「細胞外アミロイド線維Curliの産生におけるDnaK/Hsp70シャペロンのヌクレオチド交換因子GrpEの必須性の解析」と題し発表を行った。Curliは大腸菌やサルモネラなどの腸内細菌科細菌によって菌体外に作られるアミロイド線維であり、これらの細菌のバイオフィルムの形成や宿主への感染・定着に重要な役割を果たす。これまでの研究により、分子シャペロンの一種であり70 kDaの熱ショックタンパク質(Hsp70)の細菌ホモログであるDnaKがCurliの産生に重要な役割を果たすことが明らかになっている。しかし、この機能において、DnaKのADP/ATP交換因子として機能するGrpEが必須か否かは不明であった。本発表では、様々な大腸菌遺伝子欠損株や遺伝子相補株を用いて実験を行い、「GrpEはCurli産生には必須ではない」ことを報告した。従来、GrpEはDnaKの生理機能に必須と考えられてきたが、本研究によってGrpE非依存的なDnaKの機能を新たに見出すことができた。この功績と明快なプレゼンテーションが評価され、35歳以下の若手研究者の中で優れた発表を行った者に授与される優秀発表賞を受賞するに至った。
近年、「ユニット医学研究」を履修して研究活動に励む学生が増えており、細菌学講座およびバイオフィルム研究センターでも多くの医学科生を受け入れている(令和5年12月時点で10名)。今後も多くの学生が医学研究に取り組むことで、益々活躍することを祈念する。
(細菌学講座担当教授 金城雄樹記)