東京慈恵医科大学同窓会
最新情報2024年04月25日 2023年同窓会振興資金による海外派遣報告
分子免疫学研究部 大学院 加藤一彦(準平27)
消化器内視鏡診断治療学 大学院 伊藤 守(準平29)
分子免疫学研究部 大学院 加藤一彦(準平27)
令和5年11月、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアにて開催されたAmerican Soci-ety of Nephrolo-gy Kidney Week 2023(米国腎臓学会2023)に参加し、「Se-rum magnesium levels and cogni-tive function in patients with he-modialysis: A cr-oss-sectional stu-dy」と題した臨床研究を発表する機会をいただいた。認知症は全世界で現在約5000万人が罹患し、QOLのみならず、生命予後を増悪させる世界的な課題である。透析患者における認知症の罹患率は一般高齢者に比べてより高率であるが、治療介入の手立ては限られている。
近年、慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(chronic kidney disease - mineral and bone disord-er:CKD-MBD)と認知症との関連性が基礎研究を中心に報告がなされている。そこで、CKD-MBDに関連する因子と認知機能の関連について、血液透析患者390名を対象とした横断研究を行った。Montreal Cognitive Assess-mentやMini-Me-ntal State Exami-nationといった認知機能検査で測定した認知機能と、CKD-MBDの各因子との関連を検討したところ、血清マグネシウム濃度と認知機能の間に独立した関連を認めた。本結果から、血液透析患者において血清マグネシウム濃度を高く保つことが、認知機能維持に有用である可能性が示された。現地では多くの先生からご意見ご質問を賜り、本研究のさらなる考察や新たなアイディアの醸成につながった。
最後になりましたが、ご指導いただきました分子疫学研究部浦島充佳教授、腎臓・高血圧内科担当横尾隆教授、大城戸一郎准教授、中島章雄助教をはじめ、指導医の先生方、また海外派遣にご支援いただいた同窓会の先生方に深く御礼申し上げます。
消化器内視鏡診断治療学 大学院 伊藤 守(準平29)
令和5年10月15日、デンマーク・コペンハーゲンで開催された31st United European Gastroenterology Week : UEGW2023(第31回欧州消化器病週間)において、「A study on the lea-rning curve of the novel throu-gh-the-scope syst-em for endoscop-ic closure」を発表する機会をいただいた。
消化管の表在型腫瘍に対する内視鏡治療後の粘膜欠損は、遅発性出血や遅発性穿孔、凝固症候群等の原因となる。予防的な内視鏡的創閉鎖術は、これら合併症の減少との関連が報告されている一方、内視鏡用クリップでは大きな粘膜欠損の閉鎖が困難であることや、内視鏡的縫合術は手技が煩雑で長い処置時間を要することから、実臨床における応用例が限られている。X-Tack(Apo-llo Endosurgery社)は、内視鏡の鉗子口を通して、縫合糸で繋がれた螺旋状の鉄鋲を粘膜欠損部周囲の消化管壁に留置し、粘膜欠損を縫縮することを可能とした新規の創閉鎖デバイスである。我々は、胃に粘膜欠損を作成した豚モデルを用いて、X-Tackによる内視鏡的創閉鎖術の習熟に要する件数を調査したところ、内視鏡の習熟者も未習熟者も少ない件数で手技を習得することを報告した。
ヨーロッパの学会に参加したのは初めてであり、英語での活発な議論や世界における研究の傾向など、大変貴重な学びの機会をいただいた。
最後に、ご指導いただいた土橋昭講師、玉井尚人准教授、炭山和毅教授、海外派遣にご支援いただいた同窓会に厚く御礼申し上げます。